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南北相法巻ノ八(南北相法後篇巻ノ三)

水野南北居士 著

 
 


《血色の部(八色の弁)》

まず血色を観る時、眼で観ても意(こころ)で感じても青色ならば、それは青色である。また同様に、眼で観て白色であり、意で白色と感じるならば、それは白色である。青色(せいしょく)、黄色(こうしょく)、赤色(しゃくしょく)、白色(はくしょく)、黒色(こくしょく)、美色(びしょく)、紫色(ししょく)、紅色(こうしょく)においても、以上の道理をもって考え、観なさい。血色には青色、黄色、赤色、白色、黒色、紅色、紫色、暗色(あんしょく)、滞色(たいしょく)、蒙色(もうしょく)があるが、その全ては五色(ごしき、=青[肝]、赤[心]、黄[脾]、白[肺]、黒[腎]*[]は対応する五臓)から逸脱するものではない。まず、青色は肝気から生じる。黄色は脾気から生じる。赤色は心気から生じる。白色は肺気から生じる。黒色は腎気から生じる。つまり、これらの血色は全て、五臓の働きによって生じるのであり、ゆえに五色から逸脱する事はないのである。また、暗色は黒色に似ており、腎気から生じる。蒙色は青色に似ており、肝気から生じる。紅色は心気健正(しんきけんせい)から生じる。紫色は心腎から生じるが、心肝から生じる事がある。滞色は、確実にないとは言えない血色である。元来、血色は天地の気に准(じゅん)じて、自然と生じるものである。しかし、血色というものは、表面に現れる前は皮膚の下に滞り潜んでいるため、その血色をはっきりと観定め難い。ゆえに、このような状態の血色を滞色と名付けるのである。よって、五色においても、表面に現れる前は全て滞色である。例えば、青色が表面に現れる前は、「青の滞色」と言う。また、黄色が現れる前は、「黄(こう)の滞色」と言う。以上の五色、八色とも、表面に現れる前は皮膚の下に滞っているため、滞気とか滞色と言うのである。滞色が必ずあると心得て観る事が重要で、決して迷って判断してはならない。大体において、血色には過去の事は現れない。ただただ、現在の吉凶のみが現れるのである。
 

《二十一穴の図(図1参照)》

↑図1「二十一穴の図」


・天中(てんちゅう)の官
・主骨(しゅこつ)の官
・日月(じつげつ)の官
・兄弟(けいてい)の官
・諸友(しょゆう)の官
・山林(さんりん)の官
・福堂(ふくどう)の官
・辺地(へんち)の官
・土星(どせい)の官
・命宮(めいきゅう)の官
・妻妾(さいしょう)の官
・男女(だんじょ)の官
・顴骨(けんこつ)の官
・奸門(かんもん)の官
・食禄(しょくろく)の官
・法令(ほうれい)の官
・承漿(しょうしょう)の官
・地閣(ちかく)の官
・奴僕(ぬぼく)の官
・天陽(てんよう)の官
・高広(こうこう)の官
 

《二十一穴が司る意味》

・天中、天陽、高広の官は、通常自分では予想出来ない吉凶を観る。
・主骨の官は、主人や目上に関する事を観る。
・日月の官は、父母や目上(≒上司)に関する事を観る。
・兄弟の官は、親族に関する事を観る。
・諸友の官は、友人に関する吉凶を観る。
・山林の官は、先祖から譲り受けた家督の盛衰を観る。
・福堂の官は、金銭に関する事を観る。
・辺地の官は、旅行の吉凶や、遠方との駆け引き(=取引)に関する事を観る。
・土星の官は、自分自身の体に対応しているゆえ、己に関する吉凶を観る。
・命宮の官は、病の有無や、家庭内に関する事を観る。
・妻妾の官は、妻や恋人に関する事を観る。
・男女の官は、子孫や目下(≒部下)に関する事を観る。
・顴骨の官は、世間や他人に関する事を観る。
・奸門の官は、陰の女(≒愛人)に関する事を観る。
・食禄の官は、現在の家督の吉凶を観る。
・承漿の官は、薬違い(≒薬が自分の体に合っているか)や、食中(しょくあた)りに関する事を観る。
・地閣の官は、家宅に関する事を観る。
・奴僕の官は、家来や目下(≒部下)に関する事を観る。
 
以上の穴所の詳しい取り方については、南北相法前篇、骨格の部に記した。また、骨格の部を参照し、以上の穴所が確定されたものである事を理解しなさい。
 

《八色の意味》

・青色、白色、紫色の三色は何れも愁(うれ)い、驚き、辛労を司る。
・赤色は災難事を司る。
・黒色は離別や損失、失敗を司る。
・黄色、紅色、美色の三色は何れも悦びや善事を司る。 
青白色で潤いがない時は、愁いや驚き、辛労が迫っている。逆に潤いがある時は悦びがある、と観なさい。紫色の場合は、潤いがあっても愁いからは免れ難い。 
黒色で潤いがない時は、離別や損失、失敗が迫っている。逆に潤いがある時は、愁いや辛労がある、と観る。 
赤色で潤いがない時は、災難が迫っている。逆に、潤いがある時は、悦びや善事がある、と観る。 
黄色、美色に潤いがある時は、悦びや善事が迫っている。逆に潤いがない時は、愁いや辛労がある、と観る。 
青色に観えても潤いがある時は、黄色と観る。また、黄色に観えても潤いがない時は、青色と観る。 
赤色に観えても潤いがある時は、紅色と観る。また、紅色に観えても潤いがない時は、赤色と観る。 
白色に観えても潤いがある時は、美色と観る。美色に観えても潤いがない時は、白色と観る。
黒色に観えても潤いがある時は、紫色と観る。紫色に観えても潤いがない時は、黒色と観る。
 
以上の事は全て、潤いの有無によってその血色が確定する事を理解しなさい。
 

《血色における潤いの有無を論ずる》

潤いのない血色は、しばらく観ていると、太陽が西方の山に沈むように自然と淋しく観える。潤いがある血色は、始めは悪く観えても、しばらく観ていると、太陽が東から昇るように自然と健やかに観える。つまり、潤いのある血色は「観れども冷(さ)めず」、自然と清い。また、潤いがない血色は自然と「観冷(みざ)め」があり、自然と濁っている。
 

《天中・天陽・高広の官は、通常自分では予想出来ない吉凶を観る(図2参照)》

青色、白色、紫色の三色が現れる時は、思わぬ愁い事がある。あるいは、思わぬ辛労がある。

↑図2


・赤色が現れる時は、思わぬ災いがある。
・黒色が現れる時は、思わぬ損失がある。あるいは、思わぬ失敗がある。
・黄色、紅色、美色の三色が現れる時は、思わぬ悦び事がある。

 
《主骨の官は、主人や目上の事を観る(図3参照)》

・青色、白色、紫色の三色が現れる時は、主人や目上に関する愁い事や、辛労がある。

↑図3


・赤色が現れる時は、主人や目上に災いがある。または、主人や目上からの災いが自分へ来る。
・黒色が現れる時は、主人や目上との縁が切れたり、目上の身の上に関する損失がある。
・黄色、紅色、美色の三色が現れる時は、主人や目上に悦び事がある。または、目上から自分へ悦び事が来る。
 

《日月(じつげつ)の官は、父母や目上の事を観る(図4参照)》

・青色、白色、紫色の三色が現れる時は、親や目上に関する愁い事、あるいは辛労がある。

↑図4


・赤色が現れる時は、親や目上に災いがある。または、目上の災いが自分へ来る事があると判断しなさい。
・黒色が現れる時は、親や目上との縁が切れる。または、目上の身の上に関する失敗や損失がある。
・黄色、紅色、美色の三色が現れる時は、目上に悦び事がある。または、目上からの善事が自分へ来る。
 

《兄弟の官は、親族(=身内)の事を観る(図5参照)》

・青色、白色、紫色の三色が現れる時は、親族に愁い事がある。あるいは親族に大きな辛労がある。

↑図5


・赤色が現れる時は、親族に災いがある。あるいは、親族の災難が自分に来ると判断する。
・黒色が現れる時は、親族との縁が切れる。あるいは、親族の身の上に、失敗や損失がある。
・黄色、紅色、美色の三色が現れる時は、親族に悦び事がある。あるいは、仲の良い親族がいて、その人から助力を得る。
 

《諸友(しょゆう)の官は、友人の吉凶を観る(図6参照)》

・青色、白色、紫色の三色が現れる時は、友人に愁い事がある。あるいは、友人に辛労がある。

↑図6


・赤色が現れる時は、友人に災いがある。あるいは、友人の災いが自分に来る。
・黒色が現れる時は、誠実な友人との縁が切れる。あるいは、友人に関する損失がある。
・黄色、紅色、美色の三色が現れる時は、友人に悦び事がある。あるいは、頼りになる友人がいる。
 

《山林の官は、先祖から受ける(または受けた)家督(≒財産)の盛衰の事を観る(図7参照)》

・青色、白色、紫色の三色が現れる時は、家督に関しての辛労がある。つまり、家督の衰えがある。

↑図7


・赤色が現れる時は、家督に関しての災いがある。
・黒色が現れる時は、家督を失う。あるいは、家督に関する損失がある。
・黄色、紅色、美色の三色が現れる時は、家督に関しての悦び事がある。つまり、家督の隆盛がある。
 

《福堂の官は、金銭の事を観る(図8参照)》

・青色、白色、紫色の三色が現れる時は、金銭に関する辛労がある。

↑図8


・赤色が現れる時は、金銭に関する災いがある。
・黒色が現れる時は、金銭の損失がある。何れにしても、金銭に関しての大きな失敗がある。
・黄色、紅色、美色の三色が現れる時は、金銭に関する悦び事がある。何れにしても、金銭を得る。
 

《辺地の官は、旅行の吉凶や、遠方との取引の吉凶を観る(図9参照)》

・青色、白色、紫色の三色が現れる時は、旅行に関しての愁いがある。あるいは遠方に関する愁い事がある。または、遠方との取引で大いに苦労する。

↑図9


・赤色が現れる時は、旅行、遠方との取引ともに災いがある。
・黒色が現れる時は、旅行、遠方との取引ともに損失がある。
・黄色、紅色、美色の三色が現れる時は、旅行、遠方との取引ともに悦び事がある。または、遠方から悦び事が来る。
 

《命宮の官は、病の有無、または家庭内の事を観る(図10参照)》

・青色、白色、紫色の三色が現れる時は、病気になる。または、家庭内に愁い事や辛労がある。

↑図10


・赤色が現れる時は、怪我をする。つまり、災いか病気がある。あるいは、家庭内に災いや口論がある。
・黒色が現れる時は、必ず死ぬ。または、家から離れる。あるいは、家庭内に失敗がある。
・黄色、紅色、美色の三色が現れる時は、病人は快方に向かう。または、家庭内に悦び事がある。
 

《土星の官は、自分の体そのものであり、己の身分の吉凶を観る(図11参照)》

・青色、白色、紫色の三色が現れる時は、身の上に関する辛労がある。つまり、境遇や地位において安心出来ない。

↑図11


・赤色が現れる時は、身の上に関わる災いがある。また、常に赤色がある人は、自分から身の上の災いを起こす。
・黒色が現れる時は、身の上に失敗がある。また、常に黒色がある人は、損失が多い。
・黄色、紅色、美色の三色が現れる時は、身の上に悦び事がある。つまり、その当時は安心である。
 

《妻妾の官は、妻や恋人の事を観る(図12参照)》

・青色、白色、紫色の三色が現れる時は、妻か恋人に関する愁い事がある。あるいは、恋人に関する辛労がある。

↑図12


・赤色が現れる時は、妻か恋人に関する災いがある。
・黒色が現れる時は、妻あるいは恋人との別離がある。または、恋人に関する損失がある。
・黄色、紅色、美色の三色が現れる時は、妻による悦び事がある。あるいは、恋人に関する善事がある。
 

《男女の官は、子孫や目下の事を観る(図13参照)》

・青色、白色、紫色の三色が現れる時は、子孫や目下に関する愁い事がある。あるいは、目下に関する辛労がある。

↑図13


・赤色が現れる時は、子孫あるいは目下に関する難事がある。
・黒色が現れる時は、子孫あるいは目下との別離がある。あるいは、子孫や目下に関する損失がある。
・黄色、紅色、美色の三色が現れる時は、子孫あるいは目下に関する悦び事がある。
 

《顴骨の官は、世間または他人の事を観る(図14参照)》

・青色、白色、紫色の三色が現れる時は、他人に関する愁い事がある。または、他人の辛労を自分が代わって受ける。

↑図14


・赤色が現れる時は、世間から災いを受ける。あるいは、他人の災いが自分に降りかかると判断しなさい。
・黒色が現れる時は、世間との障害が起こり(世間が塞がって)、その活路を失う。必ず失敗がある。
・黄色、紅色、美色の三色が現れる時は、世間に曇りがないに等しく、他人からの評判も良い。自然と人気が集まる。
 

《奸門の官は、陰の女(≒愛人、不倫相手、浮気相手)の事を観る(図15参照)》

・青色、白色、紫色の三色が現れる時は、陰の女に関しての辛労がある。あるいは、女に恨(うら)まれている。

↑図15


・赤色が現れる時は、陰の女からの災いがある。
・黒色が現れる時は、陰の女との別離がある。あるいは、陰の女に関する損失がある。
・黄色、紅色、美色の三色が現れる時は、陰の女に関する悦び事がある。
*妻妾の官も奸門の官も、ともに恋愛対象にある人物の事を観る。しかし、顔の正面は陽面(陽の当たる部位)であり、より正中に近い部分の妻妾の官は正妻や恋人(後ろめたさのない付き合い)の事を観る。逆に、顔の横から後ろに向かう面は陰面(陰になる部位)であり、陰の事、つまりは隠している、または隠れている事柄などを観る。ゆえに、奸門の官では公に出来ない愛人や不倫相手、浮気相手(後ろめたさのある付き合い)の事を観るのである。
 

《食禄の官は、その当時の家督の吉凶を観る(図16参照)》

・青色、白色、紫色の三色が現れる時は、家督に関する辛労がある。あるいは、家督が衰える。

↑図16


・赤色が現れる時は、家督に関する災いがある。あるいは、家督に災いが出てくる事がある。
・黒色が現れる時は、家督と縁が切れるか、あるいは家督に関する損失がある。
・黄色、紅色、美色の三色が現れる時は、家督に関する悦び事がある。何れにしても、家督の善事がある。
 

《法令の官は、その当時の家業(≒職業)の吉凶を観る(図17参照)》

・青色、白色、紫色の三色が現れる時は、家業に関する辛労がある。あるいは、家業の衰えがある。

↑図17


・赤色が現れる時は、その当時は家業に災いがある。
・黒色が現れる時は、家業から離れる(=離職する)か、あるいは家業に関する損失がある、と判断する。
・黄色、紅色、美色の三色が現れる時は、家業に関する悦び事がある。あるいは、家業が繁盛している。
 

《承漿の官は、薬違い、食中り(=食中毒)を観る(図18参照)》

・青色、白色、紫色の三色が現れる時は、食中りがある。病人は薬が合っていない。

↑図18


・赤色が現れる時は、食に関する災いがある。つまり、食い合わせが悪い。病人は薬が合っていない。
・黒色が現れる時は、食事する事が出来ない。病人は死ぬ。常人は毒を食らって死ぬ。
・黄色、紅色、美色の三色が現れる時は、病人は食欲が回復する。常人は珍味を満喫する。
*承漿の官…経穴(=ツボ)の「承漿」よりも少し上に位置する。下唇の直下。漢方においては、瞑眩なのか否か(薬が合ってるか否か)を見分けるのが困難なのである云々、などと長年真剣に議論されているが、人相術を会得すれば簡単である。つまり、承漿の官を観るのである。人相術をしっかりと学べば、現在日本で伝えられている望診の類が非常にお粗末であることがわかる。
 

《地閣の官は、家の事を観る(図19参照)》

・青色、白色、紫色の三色が現れる時は、家に関する辛労がある。または、家庭内に愁い事がある。

↑図19


・赤色が現れる時は、家に関する災いがある。あるいは、家庭内に災いがある。
・黒色が現れる時は、家から離れるか、あるいは家による損失がある、と観る。
・黄色、紅色、美色の三色が現れる時は、家に関する悦び事がある。あるいは、家庭内に善事がある。
 

《奴僕の官は、家来または目下(≒部下)の事を観る(図20参照)》

・青色、白色、紫色の三色が現れる時は、家来や目下に関する愁い事がある。あるいは、目下に関する辛労がある。

↑図20


・赤色が現れる時は、家来や目下に関する災いがある。
・黒色が現れる時は、家来や目下との離別があるか、あるいは、家来や目下に関する損失がある。
・黄色、紅色、美色の三色が現れる時は、家来や目下に関する悦び事がある。
 
以上の血色は、百六十八種類ある。また、潤いの有無を含めば三百三十六種類ある。以上に記した事は「八色一口(はっしょくいっこう)の伝」と言い、血色は縦横に走る、という部分が第一の要である。まずは穴所を知り、次に穴所が司る意味を理解し、そして八色を知り、八色が司る意味を理解し、最期に潤いの有無を理解するのである。そうすれば、面部における三百三十六種類の血色が縦横に走るその意味を、自然と理解する事が出来る。しかし、実践が足らぬ者では、青黄赤白黒紫美紅(せいこうしゃくびゃくこくしびこう)の八色を観分け難い。ゆえに、修行が足らぬ輩(ともがら)は以上の八色を用いず、善悪の血色のみ用いて、その吉凶を判断すべきである。
 

《七穴(ななけつ)の図(図21参照)》

・官禄(かんろく)の官

↑図21


官禄の官は、その当時の吉凶を観る。
 
・神光(しんこう)の官
神光の官は、神仏を祈っているか否かを観る。
*いわば「信仰の官」である。信仰心が篤いか否か、信仰している対象が正か邪か、などを観る。何かに憑依されている者、邪教に走っている輩は、神光の官の血色が悪い。良い神仏に縁があり、信仰心が篤い者は、神光の官が自ずと美しい。
 
・駅馬(えきば)の官
駅馬の官は家(≒住居)の建築工事や、住居の移転について観る。
 
・印堂(いんどう)の官
印堂の官は、望み事が叶うか否かを観る。
 
・家続(かぞく)の官、魚尾(ぎょび)の官
家続の官、魚尾の官は、その当時の心気の吉凶を観る。
*「家族」ではない。
 
・右身左身(うしんさしん)の官
右身左身の官は、盗難または失せ物(≒紛失物)について観る。
 
以上の七穴は、この巻においては青黄赤白黒紫美紅の八色は用いない。ただ、善し悪しの血色のみを用いてその吉凶を判断しなさい。以上の穴所は合わせて二十八穴ある。善悪の血色を用いた判断法を、次項で論ずる。
 

《天中、天陽、高広の官は、思わぬ吉凶を観る(図22参照)》

・良い色が現れる時は、思わぬ善事が来る。

↑図22


・悪い色が現れる時は、思わぬ悪事が来る。
 

《主骨の官は、主人や目上の事を観る(図23参照)》

・良い色が現れる時は、主人か目上に関する善事がある。あるいは、目上からの善事が自分に来る。

↑図23


・悪い色が現れる時は、主人か目上に関する悪事がある。あるいは、目上からの悪事が自分に来る、と判断する。
 

《日月の官は、父母や目上の事を観る(図24参照)》

・良い色が現れる時は、親か目上に関する悦び事がある。あるいは、自分の頼りになる親か目上がいる。

↑図24


・悪い色が現れる時は、親か目上に関する悪事がある。または、目上に関する悪事が自分に来る。
 

《兄弟の官は、親族(≒身内)の事を観る(図25参照)》

・良い色が現れる時は、親族に関する悦び事がある。または、良い親族がいて、常にその助けを受ける。

↑図25


・悪い色が現れる時は、親族に関する悪事がある。または、親族の悪事が自分に来る。
 

《諸友の官は、友人に起こる吉凶を観る(図26参照)》

・良い色が現れる時は、友人に関する悦び事がある。または、友人から自分に善事が来る。

↑図26


・悪い色が現れる時は、友人に関する悪事がある。または、友人の悪事が自分に来る。
 

《山林の官は、先祖から譲り受けた家督(≒財産)の盛衰を観る(図27参照)》

・良い色が現れる時は、家督が盛んである、と観る。

↑図27


・悪い色が現れる時は、家督に衰えがある、と観る。
 

《福堂の官は、金銭の事を観る(図28参照)》

・良い色が現れる時は、金銭に関する悦び事がある。つまり、金銭を得る(≒臨時収入がある)。

↑図28


・悪い色が現れる時は、金銭に関する辛労がある。あるいは、金銭の損失がある、と観る。
 

《辺地の官は、旅行(≒遠くへ行く、出張など)の吉凶や、遠方との取引(≒通販、駆引きなど)の吉凶を観る(図29参照)》

・良い色が現れる時は、旅行の途中や旅行先で善事がある。または、遠方との取引で必ず利益が出る。

↑図29


・悪い色が現れる時は、旅行の途中や旅行先で悪事がある。または、遠方との取引は大凶で、必ず利益が出ない。
 

《土星の官は自分自身の体に対応しており、己の吉凶を観る(図30参照)》

・良い色が現れる時は、その当時は境遇が良く、障害がない。

↑図30


・悪い色が現れる時は、その当時は身の上の辛労がある。つまり、境遇が悪く、安堵(あんど)出来ない。
 

《命宮の官は、病の有無や、家の事を観る(図31参照)》

・良い色が現れる時は、病人は快方に向かう。常人は家あるいは家庭内に関する善事がある。

↑図31


・悪い色が現れる時は、病気になる。または、家あるいは家庭内に関する辛労がある。
 

《妻妾の官は、妻や恋人の事を観る(図32参照)》

・良い色が現れる時は、妻に関する悦び事がある。何れにしても、恋人に関する悦び事がある。

↑図32(○の部分が妻妾の官)


・悪い色が現れる時は、妻あるいは恋人に関する辛労がある。総じて、恋人に関する事は良くない。
 

《男女の官は、子孫または目下の事を観る(図33参照)》

・良い色が現れる時は、子孫や目下に関する悦び事がある。

↑図33


・悪い色が現れる時は、子孫あるいは目下に関する辛労がある。
 

《顴骨の官は、世間または他人の事を観る(図34参照)》

・良い色が現れる時は、世間からの評判が良く、自然と人気が集まる。

↑図34


・悪い色が現れる時は、世間との障害が起こり、評判が良くない。
 

《奸門の官は、陰の女(≒愛人、不倫相手、浮気相手)の事を観る(図35参照)》

・良い色が現れる時は、陰の女に関する悦び事がある。

↑図35


・悪い色が現れる時は、陰の女に関する辛労がある。
 

《食禄の官は、その当時の家督(≒食、職、食い扶持、財産)の吉凶を観る(図36参照)》

・良い色が現れる時は、家督に関する悦び事がある。あるいは、家督が盛んである、と観る。

↑図36


・悪い色が現れる時は、家督に関する辛労がある。あるいは、家督に衰えがある、と観る。
 

《法令の官は、その当時の家業(≒職業)の吉凶を観る(図37参照)》

・良い色が現れる時は、その当時は家業が繁盛している(=仕事が順調である)。あるいは、家業に関する悦び事がある。

↑図37


・悪い色が現れる時は、その当時は家業に関する辛労がある。あるいは、家業の衰えがある。
 

《承漿の官は、薬違い(≒飲み薬が合ってない)、または食中り(≒食中毒)を観る(図38参照)》

・良い色が現れる時は、病人は食欲が回復し、常人は珍味(原文は「珍物」、普段口に出来ない贅沢品など)を満喫する(満足するまで喫[くら]う)。

↑図38


・悪い色が現れる時は、食中り(≒食中毒)がある。または、病人は薬違いがある。
 

《地閣の官は、住居の事を観る(図39参照)》

・良い色が現れる時は、住居に関する悦び事がある。あるいは、家庭内に関する悦び事がある、と観る。

↑図39


・悪い色が現れる時は、住居に関する辛労がある。あるいは、家庭内に関する辛労がある、と観る。
 

《奴僕の官は、家来または目下(≒部下)の事を観る(図40参照)》

・良い色が現れる時は、家来や目下に関する悦び事がある。あるいは、良い(≒助力してくれる)目下がいる、と観る。

↑図40


・悪い色が現れる時は、家来や目下に関する辛労がある。または、良い家来(≒部下)がいない。
 

《神光の官は、神仏を祈っているか否かを観る(図41参照)》

・良い色が現れる時は、信仰心がある。また、神仏に祈る(=感謝する)事で御利益がある、と観る。

↑図41


・悪い色が現れる時は、、不信心(ふしんじん)である。
 

《官禄の官は、その当時の吉凶を観る(図42参照)》

・良い色が現れる時は、その当時は良い。諸事が順調である。

↑図42


・悪い色が現れる時は、その当時は良くない。辛労が多い。
 

《印堂の官は、望み事が叶うか否かを観る(図43参照)》

・良い色が現れる時は、望み事が成就する。なお、悪色が混ざっていないかどうかをよく観なさい。

↑図43


・悪い色が現れる時は、望み事は一つとして叶い難い。
 

《駅馬の官は、住居の建築工事や、住居の移転について観る。(図44参照)》

・良い色が現れる時は、(嬉しい)住居の工事(≒増築、改装、リフォーム)がある。あるいは、(嬉しい)引っ越しがある。

↑図44


・悪い色が現れる時は、住居の損害がある。あるいは、住居に関する辛労がある。
 

《魚尾、家続の官は、その当時の心気の吉凶を観る(図45参照)》

・良い色が現れる時は、その当時は心気が健やかで、強い。

↑図45


・悪い色が現れる時は、心気の衰えがある。
*家続の官は、別名田宅とも呼ぶ。左右の上まぶたの部分にあたる。
 

《右身左身の官は、盗難や失せ物(=紛失物)の事を観る(図46参照)》

・良い色が現れる時は、盗難や紛失があったとしても、それらは再び手元に戻る。

↑図46


・悪い色が現れる時は、盗難や紛失がある。
 

《追記》

一 男女の官に黒色がある時は、子孫や目下との離別がある、と言う。しかし、常に眼の下が黒い者は考慮しない。曇りがない中、黒い色が幽かに現れるものを考慮する。
 
一 顴骨に赤色がある時は、世間や他人からの災いが自分に来る、と言う。しかし、常に顴骨が赤い者は考慮しない。針の先で突いたような赤色を考慮する。だが、赤点が多くある場合は考慮しない。ただ一つだけある場合のみ考慮する。必ず吹き出物とは限らない。
 
一 奸門の官に赤色がある時は、陰の女に関する災いがある、と言う。しかし、常に奸門が赤い者は考慮しない。この事は後篇巻ノ一に記した。
 
一 承漿の官に赤色がある時は、食い合わせが悪かった(≒食中毒)か、薬が合っていない、と言う。しかし、脾の臓に熱がある時は、この場所が赤くなる事がある。この事を心得て観なさい。
 
一 妻妾の官に悪い色が現れる時は、付き合っている女についての辛労がある。しかし、結婚して長い者は、自然と妻妾の官の血色が悪く観える。この事を心得て観なさい。
 
一 神光の官に良い色がある時は、信仰心のある人である。しかし、常に額の左右が黒い者においては心得ておかねばならない。つまり、信仰心が強ければ、その黒き色の中に、自然と良い色が現れている。
 
一 駅馬の官に黒色がある時は、家の破損がある。しかし、常に駅馬の官が赤い者、または黒い者は考慮しない。この事は後篇巻ノ一に記した。
 
一 奸門の官に良い色がある時は、陰の女に関する悦び事がある。しかし、総じて色情の事は陽気(=能動的かつ嬉しい事、欲望を満たす事)であり、楽しんで交わる。ゆえに、色難の相であっても、自然と潤(うる)わしく、美色を生じる。この事を心得て観相しなさい。
 
一 土星の官に赤色がある時は、身の上に関わる災いがある。しかし、俗に言う石榴鼻(ざくろばな、原文は「赤瘤鼻」。「酒皶(しゅさ)」も同様。)で、常に鼻が赤い者は考慮しない。以上に述べた赤色とは、粟粒あるいは麦粒くらいの大きさの赤点の事を言う。赤点は必ずしも、吹き出物とは限らない。赤点が数多くある場合は考慮しない。ただ一つだけある場合のみ考慮する。
 

《血色の出生を論ずる》

血色は全て五臓から生ずる。例えば、肝気が健やかである時は青色に潤いを生じ、逆に衰えている時は潤いを失う。脾気が健やかである時は黄色に潤いを生じ、逆に衰えている時は潤いを失う。肺気が健やかである時は白色に潤いを生じ、逆に衰えている時は潤いを失う。黒色は腎気から生ずるとは言っても、腎気が健やかである時は、面部(≒顔一面)に潤色が現れる。これはつまり、腎、命門、陰火による潤いである。逆に腎気が衰える時は、自然と命門の火勢が強まり、面部に火のような赤色が現れる。さらに、腎が死なんとする時は、その赤色が黒色に変化する。ゆえに黒色は、腎気が健やかな時に生ずる良色ではなく、大いに悪色なのである。黒色は、「亡(ほろ)びて元に帰る」の色である。例えば、万物がこの世界に終わりを告げて無に帰る時は、変じて黒色となるものである。ゆえに、黒色は万色の終わりと判断しなさい。赤色は心気から生ずるが、赤色には種類が多い。例えば、心気が健やかな時に生じる赤色は薄紅色のようであり、自然と潤いを含んでいる。これを「心悦(しんえつ)の赤色」と言い、紅色(こうしょく)と名付ける。逆に、心気が衰える時は、自然と陰火が高ぶる。よって、火のような赤色が現れる。これを「災いの赤色」と言う。心と腎が健やかである時は、面部に紅潤(こうじゅん)色が現れる。つまり、紅色は心の色、潤色は腎による潤いで、これを美色(びしょく)と名付ける。紫色(ししょく)は心と肝により生ずる(→心の赤色と肝の青色が混じった色)。また、紫色は心と腎(赤色+黒色)によっても生じる。しかし、この場合は、心、肝、腎が健やかゆえに紫色が生ずるのではなく、心と肝の気が衰えるゆえに紫色を生ずるのである。また、心と腎の気が衰えた時も紫色を生ずる。例えば、横死する時は、心と肝の気が大いに窮(きゅう)してから死ぬ。ゆえに、唇に紫色を生ずるのである。また、毒を食せば、心と腎の気が大いに窮してから死ぬ。ゆえに、唇に紫色を生ずる。よって、紫色は良くない色である。人は陰陽、血脈から成っているため、少し赤く、潤いがあるものを人体の常とする。陽気が衰える時は赤色を失い、陰気が衰える時は潤色を失う。ゆえに、人は陰陽の交代(≒循環)が良いものを吉とする。つまり、陰陽の交代が良い時は、自然と五臓六腑も完全である。ゆえに、身体は健やかで、常に潤色を生じている。潤色とは、つまりは血脈五気の潤いである。
 
古書には以下のように記されている。「青色は春に対応する。ゆえに、春の面色(=顔色)は青いものを吉とする。赤色は夏に対応する。ゆえに、夏の面色は赤いものを吉とする。白色は秋に対応する。ゆえに、秋の面色は白いものを吉とする。黒色は冬に対応する。ゆえに、冬の面色は黒いものを吉とする。しかし、これらは君子(≒徳のある人、天皇)に現れる血色である。常人(≒凡人)に現れるものではない。君子は天地(の道理)に順(したが)っており、曲がる(≒偏る)事はない。つまり、君子は天地同体の人である。天地と同体であるがゆえに、四季に応じた血色が自然と現れるのである。よって、天地の吉凶は君子の血色に現れるのである。愚者は、人が天地同体である事を知らぬがゆえに、天(≒神仏、先祖)を恨(うら)む。よって、愚者には、四季に応じた血色や気色が現れる事はない。」また、このようにも記されている。「血色は二種類ある。一つは、法性(ほっしょう、≒真如)の心気から、時候の(=その季節に順じた)気色として生じる血色である。つまり、その時が来れば血色として現れるもので、天時(≒天に応じた)の血色と言い、自ずと完全な血色であり、まずは君子に現れる血色である。もう一つは、己から生じる血色である。これはすなわち、我慾(がよく)の血色であり、自ずと烈しい(≒鋭い)血色である。」以上の事を常に心得た上で、観相すべきである。
 

南北相法後篇巻ノ三 終
 
 
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