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薬と鍼の副作用について

 

偶発的でない薬の副作用

 
 薬は身体が備える機能を代償する代わりに、徐々に臓器本来の機能を奪ってゆくという性質があります。実際、長期間にわたる投与または服用を突然中止すると、リバウンド的に臓器本来の機能が過剰に亢進、または抑制されたり、ついには臓器自体の機能が停止してしまうとか、飲み合わせによる化学変化で予期せぬ副作用が誘発され、添付文書に記されていない症状が見られたり、難病を発症する、というケースも少なからずあります。
 
 例えば、たった1日降圧剤を飲み忘れただけで、収縮期血圧が200mmHg以上にまで上昇、クモ膜下出血を起こしたり(降圧剤中止による異常な血圧上昇)、頭痛外来に通院するようになってから、それまで見られなかった血管拡張性頭痛や酷い偏頭痛、群発頭痛が出るようになったり(頭痛薬常用による血管拡張性の亢進)、筋肉増強やED治療のために男性ホルモンを頻繁に投与していたら男性不妊症や女性化乳房となった(精巣機能の低下&萎縮)など、枚挙に暇がありません。
 
 最も恐ろしいことは、患者自身が、自分が使用している薬の副作用についてよく理解していないことです。また、医師も多忙であるためか薬の副作用について十分な説明をせず、薬が過剰に投与されてオーバードーズによる重篤な症状を発症したり、結果として臓器が不可逆的な経過をたどることがあります。さらに、病状が末期になると、薬の副作用による症状が、あたかも偶発的に起こっているかのように信じ込まされてしまう、ということです。
 
 確かに、薬は上手な短期使用で利点を享受できることもありますが、本質的な副作用を考えると、本当に薬が必要な場合以外は、なるべく薬に頼らず治す方法を模索するのが無難です。
 
 

鍼にも副作用がある

 
 日本では鍼の副作用について記された文献は皆無に等しいですが、実際、鍼にはいくつかの副作用が見られます。一般的な副作用は強刺激の留鍼による迷走神経反射で、めまい、吐き気、倦怠感の他、一過性の疼痛増悪や内出血、鍼依存などが見られることもあります。日本では自らの保身のため、根拠なく「鍼に副作用はありません!」と喧伝している鍼灸師が少なくありません。しかし、臨床経験を積んでゆく過程で、鍼の副作用はいわば避けては通れぬ難題であり、賢明な鍼灸師においては、昔から解決すべきテーマの1つとなっていました。
 
 特に、長時間、長期間にわたる留鍼は血管の自律的収縮・拡張作用を阻害する可能性があります。実際、留鍼施術の刺激強度が過剰であると、施術期間が長期にわたるほど、偏頭痛や血管拡張性頭痛が悪化したり、各種疼痛が増悪したり、最終的には長期の断続的侵害刺激による脳機能の低下(鬱や強い倦怠感、鍼依存など)が見られることがあります。上海市中医薬科技情報研究所所長で、著名な中医である張仁が2004年に記した《针灸意外事故防止》には、“针灸依赖症(鍼灸依存症)”について、以下のように記しています。
 
 「中国国内では、1997年、張鋭が雑誌『中医研究』で鍼灸依存症39例について記している。鍼灸依存症の正確な原因は不明である。39例の分析結果では、性別、職業、教養レベルに差は見られなかった。鍼灸依存症は40~49歳程度の既婚者に多く見られ、以下4つの条件との関連が考えられる。1.機能性疾患を患っているゆえに鍼灸治療を選んだ者。2.慢性病患者で他の治療法では明らかな効果が見られず、かつて鍼灸治療で一定の効果を得た者。3.神経質または心理的素質が不安定な者。4.好奇心で他の治療手段と比較したい者。」
 
 張仁の臨床経験では1~3のケースが多く見られたそうです。また、鍼灸依存症は鍼灸に対する強烈な心身依存、治療後の多幸感や疼痛、不快症状の軽減または消失が見られ、多針、多灸、強刺激を好む傾向にあります。さらに、患者は一旦鍼灸治療を中止すると症状が悪化し、口実を見つけて能動的に鍼灸刺激を求めることがあり、鍼灸治療歴が長いほど依存は起こりやすいようです。
 
 鍼灸依存症は、簡単に言えば断続的かつ強烈な留鍼刺激による脳への侵害刺激と、脊髄への反射(軸索反射)で起こる、半ば強制的な血管拡張作用によって誘発されると考えられます。そのため、留鍼の刺激量を減らしたり、適切に速抜することで副作用を避け、鍼灸治療によるベネフィットを最大限に享受することが可能となります。
 
 

中医微创” 

 
 中国では2000年頃から、“中医微创”と呼ばれる新しい概念が主流となっており、低侵襲で最大限の効果を出す刺鍼法が多数開発されてきました。実際、中国では長時間留鍼せずに、即座に症状を緩和させたり、痛みを取り除くことが可能となっています。また、旧来の刺鍼法に比べて、副作用もほとんど見られません。当院でも、寝違えやぎっくり腰、偏頭痛、食いしばりによる顎の痛み、肩凝り、背中の痛み、腱鞘炎、テニス肘、ランナー膝、グロインペイン症候群など、専門外来や他の有名な鍼灸院で難治とされた病態であっても、短時間・最小限の刺激量で、最大限の効果を出せるようになりました。当院院長が開発した「つばめ式」についてはこちらのページ「つばめ式刺鍼法について」をご参照ください。
 

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