• HOME
  • >
  • 正しい鍼灸院の選び方

フェイクと情報弱者たち

ちょっと鍼灸治療でも受けてみるかと思い立った時、ほとんどの人はネットの力に頼ってしまうでしょう。Googleで検索をかけると、だいたい上位に来るのは「東京 鍼 名医」とか、「東京 鍼 小顔」とか、「東京 鍼 評判」とか、「東京 鍼 口コミ」なんていうワードです。
 
そもそもそんな検索で本当の名医やらに出会えるとは思えませんし、ネット上の口コミサイトはヤラセが少なくないですから、狙った鍼灸院で期待通りの施術を受けられる可能性は低いかもしれません。実際に、口コミサイトへの投稿は同業者や、精神的に不安定な人からの事実無根の嫌がらせコメントもよくあります。特に、鍼灸業界に関して言えば、口コミサイトや質問サイトや2ちゃ〇ねるなどであたかも事実であるかのように専門家気取りで騒いでいる鍼灸師は、実際には臨床現場で役に立たぬような人々が多いようです。だいたい、有能な鍼灸師は多忙ですから、そういった掲示板的サイトや2ちゃ〇ねるなどに関わるヒマなどないという事実は、想像に難くないと思います。
 
そもそも、口コミサイトは誰でも匿名で気軽に投稿できたり、システム上悪用されやすいという根本的な問題があるようですが、特に「初投稿の場合は星3つ以上でないと投稿できません」とか、「店舗の不利益になるような口コミは削除します」などという、元から正当に評価できないようなシステム自体が真実を隠蔽し、イ〇チキを助長する温床となっているようです。
 
そもそも、口コミサイトにも儲けるためのカラクリがあるようです。つまり、店舗側から金をもらう代わりに運営者側が口コミの順位を意図的に操作し、店舗側と口コミサイト運営側がお互いに不当な利益を得る、という消費者にとってはアンフェアなやり方が2008年頃から流行り出すようになりました。確かに真面目に運営している口コミサイトもあるようですが、事実とは異なる口コミを垂れ流しにし続けているサイトも実在します。
 
当院も鍼灸院を開設して間もない頃は、某口コミサイトから営業の電話が毎日のようにあり、「正会員になって会費を支払っていただければ順位を上位にしますよ!」なんて言われていました。しかし、私にはそういうイン〇キをしてまで患者を集めてやろうという魂胆など微塵もなかったので、営業関係の電話はすべて断るようにしていました。当時はSEO対策関係の営業電話も多くて、「毎月一定額の料金を頂ければGoogleの検索で上位にくるようにしますよ!」なんて電話もよくありました。しかし、そもそもコンテンツの少ない、内容の希薄なウェブサイトなどに外部業者がSEO対策を施したとしても、Googleの検索アルゴリズムが変化すれば何れはそういうサイトは淘汰されてゆくでしょうし、そんな狡猾なことはする気にもならなかったので、無視していました。
 
ちなみに、そういう虚構で作り上げられ、あっという間に検索上位に伸し上ってきたような新参ウェブサイトは、ちょっとみれば判別がつきます。しかし、普段からそういう真偽を見分ける訓練をしていない消費者は、そういうサイトに延々と騙され続けてしまうかもしれません。とにかく、現代は嘘の情報が沢山溢れていますが、騙されやすい人は烏賀陽弘道氏の「フェイクニュースの見分け方 (新潮新書) 」でも読んで自衛してください。最近は本屋にも残念な本が少なくありませんが、これは中々の良書だと思います。
 
当院には、「口コミサイトで地域NO.1とかいう鍼灸院に行ったが全く改善しませんでした」とか、「有名な大学病院で研修を受け、名医だとか紹介されていた鍼灸師の施術を受けたが全く効果がみられなかった」などという患者がたまに来院しますが、ほとんどのケースで完治させるか、短期間で改善させています。
 
 

「レベルの低い病院は存在してはならない」

ドイツの心臓外科医として、日本人初の永代教授に任命された南和友医師はかつて某番組で「(ドイツにおいては)病院のレベルが高くなければ、そこに病院が存在することこそが悪いことなのです。」と発言されました。私は初めてこの言葉を聞いた時、「その通りだ」と合点しました。南氏曰く、日本の心臓外科医の平均的水準は世界的なレベルで見ると未だ相当に立ち遅れているらしく、その原因として旧態依然たる医師の研修システム、多すぎる病院施設、未だに出来高払い制が抜けきらない保険制度、学会による専門医資格認定の問題点などを挙げています。
 
これらは現在の日本の鍼灸業界にも共通する悪しき状況であり、この愚かしい現状に気が付いて改新すべく何らかのアクションを起こす鍼灸師が増えない限り、医学界同様、何ら変化しないと思われます。多くの医師をはじめとする医療者や患者が口を揃えて言うように、日本の鍼灸治療は極めてレベルが低く、ほとんど信頼されることもなく、いわゆる「代替医療」のひとつに成り下がってしまったままです。実際に鍼灸を「治療」であると捉えている医師や患者は少なく、あくまで慰安的な民間療法としか認識されていないようです。
 
それに加え、多くの鍼灸師がこの現状をしっかりと認識していないばかりか、慰安的療法に自己陶酔するばかりで努力する様子もなく、医師や患者からの評判は下がったままです。ただただ己の生活のために惰性で治療するばかりで、日本鍼灸界の現状を憂う鍼灸師は少ないようです。自己保身や名誉、物欲、肩書きなどに囚われた一部の鍼灸師の姿は悪徳政治屋と同様、あたかも現世を彷徨う餓鬼のようです。
 
南氏の言う「レベルの低い病院は、存在すること自体が患者にとっての悪である。」という至極当然な事実を理解し、より良き治療を提供出来るよう日々精進している鍼灸師は、私がこれまで見てきた限りでは片手で数えるくらいしか存在しません。特に日本の鍼灸界において著名な人物で該当すると思われるのは、残念ながら私の師匠である浅野周先生だけであると思われます(平成以降、数多くの中国針灸書を翻訳するなど、浅野先生ほど鍼灸に尽力し、実際に多くの患者を治し、感謝され、鍼灸業界に貢献したと言える鍼灸師を他に知りません)。
 

真の治療 

鍼灸は本来「治療」であるべきであり、「保健」や「慰安」であることはなるべく避けるべきだと考えています。短期間で患者を治し社会復帰させることが出来なければ、真の意味で治したとは言えないのです。したがって、出来るだけ少ない回数で不快症状を緩和させるか、完全に無くすように努めて治療しなければなりません。当院では、ぎっくり腰は1~2回の治療で背を伸ばして歩けるようになり、軽度の慢性腰痛や慢性頭痛、むち打ち症、頚椎症ならば数回の治療で完全に痛みや不快感が消失することがほとんどです。その他、慢性の肩こりや胸背部痛、五十肩、捻挫、手のしびれ、冷え性、無汗症、突発性難聴、耳閉感など、専門病院や専門外来でも治らない便秘、不妊症なども、時間はかかりますが改善させることが可能です。
 
例えば、突発性難聴は発症して1か月程度であれば、2~3回の施術で聴力が回復し、完治するケースがほとんどです。聴力が限りなくゼロに近くても、発症して間もなければ完治させることが可能です。膝の痛みや腱鞘炎なども軽い場合は1~3回くらいで完治させることが可能です。偏頭痛や群発性頭痛においてもほとんどのケースで2回程度の施術でそれまで現れていた症状が半減するか、消失します。
 
このような著しい効果は一般的な日本の鍼灸治療においては極めて稀なようで、どこに行っても治らなかったような患者さんが当院で治ると、「鍼は効くんですね」とか、「今までの治療は何だったんだろう」とか、「もっと早くこういう治療を受けていたかった」などと皆口を揃えたように言います。
 
医学は日々進化していると言いますが、様々な慢性痛に悩む患者が減る気配は一向にありません。むしろ、増えている感があります。また、世界的に最も多い患者は慢性疼痛の患者であり、当院はそういった患者の一助となるべく日々研究を続けています。当院の治療法、鍼灸治療に対するスタンスは、現在の日本の鍼灸業界においては完全にアウトローですしかし、重要なのは結果であり、目の前で苦しんでいる患者を治せなければ、高尚な理論はもはや空論でしかありません。
 
日本で過去に活躍した鍼灸師で、私が唯一支持出来るのは、大久保適齋くらいです。当然、彼の存在を現代の鍼灸師に知らしめた代田文誌や、鍼灸の科学化に尽力した木下晴都も偉い人だと思いますが、やはり、一番となると大久保適齋です。大久保適齋は明治期の医者だったようですが、今の日本の鍼灸師よりも遥か昔に鍼の適不適を見極めていましたし、技術的なことに関しても、現代の鍼灸師など足元にも及ばぬくらい先を行っています。私も現代の鍼灸師のレベルの低さには諦観の念さえ持っているのですが、すでに明治期にも私と同じような感覚で鍼灸界を捉え、批判している大久保適齋のような人が存在したことには、本当に驚きました。大久保適齋こそ、日本の鍼灸学校の授業で教えるべきだと思いますが、彼の存在を知らぬのか、意図的なのか、教科書には彼の名前が記されていません。当時では珍しい、大久保適齋はいわゆる科学派であり、経絡の存在を否定していたようなので、彼の言は現在の日本鍼灸界の大御所とか呼ばれている老害を全否定することになりかねないので、私個人としては意図的に外されているのだと推察しています。私とスタンスが似ているので、彼の至言を一部抜粋しておきます。
 

『余の手術は長鍼にして、其の刺鍼點僅かに十五六點に出でず。而して全体を感通せざる所なし。杉山氏は其の刺點數百に至る。其れ此如く何の理に因って其の多數を要するや、之を知るに苦しむ。…余の鍼術現今泰西の解剖生理病理に的合するも、其の診断上、病症の的否を判ぜざれば、亦た無用の長物に属す。故に余の鍼術に従事せんと欲するものは、手術鍛錬の如何より、寧ろ鍼治解剖の精確と鍼理病理の関係及び病症鑑別に熟達せんを要す。是れ余の發明する所にして、他流と其の趣を異にする所以なり。』(大久保適齋著「鍼治新書 治療篇 復刻版」昭和48年、医道の日本社、)』より引用)

 
当院でも、腰臀部や骨盤周辺部では3~5インチくらいまでの特注の鍼を使っています。鍼の太さは0.16~0.8mmくらいまで、50種類くらいの鍼を細かく使い分けています(日本の一般的な鍼灸院では長さ1寸6分、太さ0.24mmくらいまでしか使わないようです)。当院では筋肉や脂肪の厚み、刺入の角度、弛めたい筋肉の表面積の広さ、患者に必要な刺激量の強弱などによって鍼の種類を決めるのですが、ほとんどの患者はいわゆるインナーマッスル、骨に近い部分の筋肉が硬くなっているので、場合によっては太く長い鍼を使う必要が出てくるわけです。疼痛の多くは筋肉が神経を締めつけることによって起こるので、その硬くなった筋肉に刺鍼して弛めてやれば、基本的には痛みは消えます(メカニズムについてはこちら)。実際には、深い部分の筋肉に刺鍼しなければ効果が無いという症例が多いです(基本的に児童は刺鍼しないか、浅刺で速刺速抜するが、小児麻痺などにおいては中国の本に書かれているとおり留鍼した方が、著しい効果出る。ちなみに、日本の鍼灸師の多くは児童に安全に刺鍼出来ないようだ。ゆえに、ローラー鍼などで誤魔化し、大した効果がみられないケースが多い)。
 
硬くなって血液の通っていなかった筋肉に血液が流れれば、当然血液で運ばれてくる酸素や栄養が筋肉に供給され、細胞間での代謝が正常に戻り筋肉が再活性するので、筋肉に柔軟性が戻り、さらには潰されていた神経が解放されたり老廃物が分解・排泄されたりするので、痛みも消えるという道理です。一回の刺鍼で弛みきらないほど硬化した筋肉の場合は完全に弛むまでに神経が再刺激されて(つまり、それまで途絶えていた神経の疎通が正常に戻る)、まれに痛みが一時的に強く出ることがありますが、大抵は数回の治療を継続することで完全に痛みが出なくなります。
 

中国鍼灸と日本鍼灸 

中国では多くの臨床比較試験が行われ、どの治療法が、どの病気に、どれだけ効いたかをデータで出しています(まぁ、データや%には怪しいモノが沢山ありますが)。したがって、その手の本もたくさん出版されています。つまり、鍼灸を少しでも客観的、科学的に検証しようという動きがもう何十年も続いているのです。鍼灸に関しては、やはり本家本元の中国がずっと先を進んでいます。残念ながら、日本は、鍼灸に関しては中国に比べ少なくみても300年くらいは遅れている感があります。例えば、日本には未だに、針治療において古代中国から最も重視されている得気について記された文献が少なく、鍼灸学校の教科書にも、自称日本鍼灸界の重鎮である鍼灸師が記した有名な本にも得気に関しての内容がほとんど見当たりません。